真夜中、仕事をしていたらコンコンと玄関のドアをノックされた。
こんな時間に誰だろう…
チェーンをしドアを開けると、そこに立っていたのは左隣の住人だった。
左隣の住人は色白の美しい女性でモデルのKIKIに似ている。
なぜか赤いショールをまちこ巻きにしてて、まるでロシア人形みたいだった。
――――――――――――――――――――――――
「なんですか?」
「眠りたいんです」
目をふせたまま、消え入りそうな声でそう言う。
眠りたいんです? いきなりなんだ?
でも、わざわざ言いに来たという事は…
「うるさかったですか? すみません。気をつけますので」
「違います」
「は?」
「うるさくないです」
「はあ。じゃあ、なんですか?」
「眠りたいんです。もう限界ですから」
わけがわからない。
「…だから、なんなんですか?」
「眠りたいんです」
「じゃあ眠ったらいいじゃないですか」
「そうですね」
「そうですよ。はい、じゃあ帰って寝て下さい」
「違います」
だんだん、いらいらしてきた。
こちとら、早く追い返して、仕事しなくちゃなんないんだ!
「いい加減にして下さい、何が違うんですか!」
「眠りたいんです」
「だから! なん…」
言いかけたところで、
ふせていた目をこちらに向け、彼女は言った。
「あなたが」
「………は?」
「眠りたいのはわたしではなくあなたです」
「………」
「違いますか?」
なんだか、すごい迫力で、つい答えてしまった。
「…いいえ。違いません。眠りたいです」
それを聞くと彼女はニヤと微笑み、こう言った。
「おやすみなさい」
ここで目覚めた。夢だった。ヘンな夢。
いつのまにかキーボードにつっぷして眠っていたらしい。
画面には「っ」が行列を作っていた。
時計を見ると午前4時。2時間くらい眠っていた事になる。
これまでは、カクンとなってもイカンイカンと、
すぐ起きていたのに、さすがに限界か。
そういえば、彼女も言っていたな。限界だと。
というわけで、3日ぶりくらいに横になってちゃんと眠った。
8時半起床。晴天。気持ちのよい朝だった。
いつのまにかヒゲがぼうぼうになってる事に気付いた。
ヒゲを剃りながら、思った。
昨日の彼女は眠りの精かもしれんなぁと。
睡魔っていうのは眠っちゃいけない時に眠らせようとする人って感じがしる。
カクン、カクンさせていたのは、睡魔のイタズラだろう。
でも、眠りの精は眠らなくちゃいけない時に眠ろうとしない人のところにきて、
眠るようにうながしてくれる人って感じがする。まあ夢なんだけどさ。
ちなみにここは角部屋で、左隣に部屋などない。
とにかく、まとまった睡眠をとって体が軽くなった。
ありがとう眠りの精。さあ、仕事を再開しよう。





