ぼくが小用で出かけて戻ると決まってユタが言う。
「さっき、パチッと音がしたよ」
最初は、ふーんってなもんだったが、
毎度毎度、言うので気がかりになってきた。
「クローゼットの扉を締めたみたいなバンッて音がした」
パチッくらいならともかく、バンッて…
今日にいたっては、帰ってくるなり、
「さっき地震あった?」などと言いやがる。
「わからん…バイクに乗ってたから。なんで?」
「さくらいさんの画面が揺れてたよ」
はぁ?(°д°)
なんでも、ユタのスカイプ内に映るぼくの部屋の画面がガクガクと
縦揺れしていたらしい。最初は微震だろ〜なんて思ってたけど、
ユタがあんまり言うもんだから、近所の知り合いに電話で確認してみたら…
「ん? 地震? ないよ。朝からずっと」
なんですと!?(°д°)
とすると、ぼくのmacを揺らしてたのは………ギャーヽ(`Д´)ノ
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望月さん (望月と書いて“もちづき”と読む)
以前、付き合ってた子が遊びに来た時、
ぼくが寝言で「望月さん」と言ってたと教えてくれた。
望月… そんな人は知らなかった。
誰なの?誰なの?とあんまり聞くので、
「ロフトの上に住んでる人だよ」と適当な事を言った。
(以前、住んでた所にはロフトがあった)
それからというもの、2人の間では、何かあると望月さんという名が出た。
例えば何か失くし物があったら「望月さんが持ってっちゃったんだよ」とかね。
その子と別れて、引っ越して、しばらくその名を忘れていたが、
今回の事で久しぶりに思い出し口にした。
「ぼくのmacを揺らしてたのは、きっと望月さんだ」
ユタもやっぱり「望月さんって誰?」と尋ねた。
ぼくも知らない。望月さん、謎の人。