引っ越しました

2010年01月23日

林文具店の思い出5

コレの続き。これでおしまい。


泣きっ面のままのコーケッピと、なぜかぼくまで車にのっけられ、林文具店へ到着。

ぼくが買った事に気を良くしたのか、
ファミコン本体の在庫がさっそく店頭に並んでいた…
ばぁちゃんも、なかなかしたたかだ。

コー母は「あ、これね」とあっさりレジへ運ぶ。コー母に他意はない。
でも、当時、超品薄だったファミコンが、
ポッと入った店にある事自体、ありえねぇんだよ…

林文具店にしても今まで売れなかった高額商品が1日に2つも売れてウハウハだよね。
でも、ばぁちゃんはすでにぼくの顔すら忘れてるみたいだった。

釈然としない… すごく釈然としない。

だって、ぜーんぶ、ぼくのおかげじゃん? 言っちゃえば。
ポッと入った店でファミコン本体が買える事も、
売れない高額商品が1日に2つも売れた事も。
誰一人、何一つ、分かっちゃいない。
でも、言っちゃえないぼくは我慢、その光景を複雑な思いで見ていた…
そして…

コーケッピはずーっと隣で泣いていた。

ほんと、なんなんだ、おまえは。なに、その涙の意味。
今、正におまえが欲しいものが、何の努力もなく手に入るってのに、
ふてくされたようにグズりっぱなし。

それを横目に呆れてため息をついたその時だ!!

前世紀最低最悪超弩級の理不尽爆弾が投下されたのは!!


いつまでもピーピー泣いてるコーケッピに見かねた林文具店のばぁちゃんが、

「あれあれ、なんで泣いとるの。まぁ〜かわいそうに。
 ちょっと待っとりゃーよ」

とかなんとか言いながら裏にひっこみ、戻った手にあったものは…
これまた、当時大人気で超品薄だったファミコンカセット。
スーパーマリオブラザーズ。当時の販売価格、忘れもしない4900円。


そ れ を だ

「はい、これ、オマケで付けたげるわ」

(°д°)あwせdrftgyふじこlp;@!?


待ぁーて待て待て待て待て待て待て待て待て待てぇー!

ハッ!?

なーーーんだ、それ!? オマケ!? ロハ!?

ありえねぇだろ、ばーちゃん!!

ぼくのあの努力はなんだったんだ!!

食べたいおやつを我慢して我慢して、
50円ずつコツコツ貯める事、1年強。

コーケッピなんて…コーケッピなんて…

ただ泣いてただけじゃんかよ〜〜う!


あの努力を、こんな形で汚されるとは!!
傷ついた! ああ、傷ついた!! 傷ついた!!!

泣いた。こんな理不尽に小学生が耐えられるはずもない。
でも、コー母もばぁちゃんもなぜぼくが泣き出したか分からない。

コー母「あらあら、さくらい君、どうしたの?」

ばぁちゃん「あれー、ごめんねぇ。でも、これ1つしかないんだわ…」

そう聞いたとたん、ふてくされてたコーケッピがバッと顔をあげ、
ばぁちゃんの手からスーパーマリオをひったくった。

こ の や ろ う は …

スーパーマリオを手にしても、ぐずりっぱ。
コー母に「あらもう、この子は。ありがとうは?」と促され、
やっと小声でボソボソ礼を言った。


帰り道の事は覚えていない。記憶がスッポリ抜けてる。
小さい頃の事はわりと細かいところまで覚えてる方なんだけど…
たぶん、そうとう放心状態だったんだろうなぁ。

念願のファミコンを買えた喜びなんかとっくにふっとんでいた。
覚えてるのは、なぜ喜び勇んで出かけた息子が、
ふてくされて帰ってきたのかわからない、かぁちゃんの困惑顔…
そりゃそうだよね。せっかく買ってきたファミコンをほっぽって
部屋の隅っこでうずくまってんだから。

50円ずつコツコツ貯めた事はぼくの努力でも、
その小遣い自体をくれたのはとぅちゃんとかぁちゃんだ。
小学生ながらも、そのへんわきまえてたぼくだったけど、
この時ばかりは素直に「ありがとう」とは言えなかった。

とにかく、ふてくされていた。
「これがふてくされていい正当な状況だ」とコーケッピに示すがごとく。
まぁ、いつまでもそんな態度でいたから、はったおされたけどね…


――――――――――――――――――――――――

その後

それからどうなったかというと…
ファミコンとスーパーマリオを手に入れたコーケッピの家には、
連日のように友達が押し寄せたが、ぼくは意地でも行かなかった。
あんな経緯で手に入れたスーパーマリオで遊ぶ気には到底なれなかった。

そして、また50円ずつコツコツ貯めはじめた。
まっくらの画面を前に、カセットがささってない
コントローラーをぽちぽちと押したりなんかして過ごす事3・4ヶ月、
ついにボンバーマン4900円を買い、一応、気は済んだ。


この出来事は、長い間、思い出すたび、腹立たしい事だった。
たぶん、ぼくの人格形成に良くも悪くもかなり作用したと思う。
理不尽というものをどう処理すればいいのか分からなかったんだろね。

もう25年くらい前の話。
林文具店、まだやってんのかな。
ばぁちゃんは、さすがに死んじゃっただろうな。
あんなに必死な思いで買ったファミコン本体、
今じゃどこへ行ったのかも分からない…
当時夢中になって遊んだファミコンソフトと
同程度のゲームを作ってるんだから分からないもんだ。
コーケッピとは中学卒業以来、疎遠で、
今、どこで何してるかも知らない。元気だといいけど。

時はどんどん流れてゆくねぇ。
そして色んなものが変わり消えてゆく。

残るのは思い出だけだ。
あんなに腹立たしかった事でも、今じゃ大事な思い出だよ。
思い出大事。

posted by さくらい | 追想 | 更新情報をチェックする
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