その時つきあってた彼女と
母校の小学校でおちあい、校門に並んで座り話していたら、
突然、車がやってきて、目の前で止まった。
乗っていたのは20代後半の全く知らない男。
そしていきなりの怒鳴り声でこう言われた。
「乗れ!」
彼女ではなく、ぼくに向かって。
真っ赤な顔で、見開かれた目は血走っていた。
もし拒否ったら彼女を乗せようとするかもしれない。
「大丈夫だよ」と震え声で言い残しぼくは車に乗った。即発進。
心配そうに見送るサイドミラーの彼女がみるみる小さくなった。
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ど、どこへ連れていかれるのか…((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
しばらく男は無言。
歯ぎしりのギリギリという音だけが車内に響いていた。
ずいぶん経ってから、遅すぎる質問を投げかけてみた。
「あのぉ… 何かご用でしょうか?」
「おめぇら、朝からイチャイチャしてムカツクんだよ!」
狂気じみた目でギロッとすごんできた。コワー!!(°д°)
「ムカツク!ムカツク!」と何度もつぶやきながらスピードあげる男。
これは本格的にやべーッ!(°д°)
「あのぉ… あれ、ぼくの妹なんですけど…」
機転というより、とっさに口をついて出た言葉だったが、
これが思いのほか、効果があった。
男のいかつい表情が急激にゆるんでいったのだ。
「あぁ、なんだ… 妹か。
イチャイチャしてるカップルかと思った(実際はそう)
そっか…そりゃ悪かったな」
徐々にスピードゆるめ、Uターン。
その後の話で、付き合ってた彼女についさっきフラレ、
その腹いせで、こんな凶行に及んだと知る。八つ当たり。衝動的。
「も、もしカップルだったら…
どうするつもりだったんですか?」
と聞いてみたら、眉ひとつ動かさずに男は言った。
「山でボコボコにして捨てて行こうと思った」
ちょっ、怖すぎる!(°д°)(°д°)(°д°)(°д°)(°д°)
その後「元気だして下さいよ」とか「ぼくもフラレたばっかりですよ」とか
テキトーな事を言って男を落ちつかせるよう心掛けた。
すると…
「おまえの妹かわいいじゃん。紹介してくれよ」
とか言い出した。
ムリムリムリムリ!(°д°)
っていうか、あなた、ついさっきフラレたんでは?(°д°)
紹介するわけがない。ホントは彼女なんだから。
いや、例え妹だとしても、フラレた腹いせに見ず知らずのカップルの
男の方を拉致して山でボコボコにして捨てようとする男なんて紹介しない!
「いや、うちの妹、彼氏いるらしいんですよ〜 (その彼氏ってぼくだけど)
大丈夫ですよ。お兄さん、かっこいいし、またいい人見つかりますよ!」
心にもない励ましと共に、やんわり断ると、
「そっかなー」と、男はニヘッと笑った。
こりゃフラレるわ…(´Д`)
とにかく、
そんなこんなで、無事、彼女の元に帰る事ができた。
我ながら、うまいこと、やり過ごしたもんだ。
最後は、笑って手を振って別れた。
意味がわからない彼女の頭上には「?」がいっぱい浮かんでいた。
人生、何が起こるか分からない。