コレの続き。これでおしまい。
泣きっ面のままのコーケッピと、なぜかぼくまで車にのっけられ、林文具店へ到着。
ぼくが買った事に気を良くしたのか、
ファミコン本体の在庫がさっそく店頭に並んでいた…
ばぁちゃんも、なかなかしたたかだ。
コー母は「あ、これね」とあっさりレジへ運ぶ。コー母に他意はない。
でも、当時、超品薄だったファミコンが、
ポッと入った店にある事自体、ありえねぇんだよ…
林文具店にしても今まで売れなかった高額商品が1日に2つも売れてウハウハだよね。
でも、ばぁちゃんはすでにぼくの顔すら忘れてるみたいだった。
釈然としない… すごく釈然としない。
だって、ぜーんぶ、ぼくのおかげじゃん? 言っちゃえば。
ポッと入った店でファミコン本体が買える事も、
売れない高額商品が1日に2つも売れた事も。
誰一人、何一つ、分かっちゃいない。
でも、言っちゃえないぼくは我慢、その光景を複雑な思いで見ていた…
そして…
コーケッピはずーっと隣で泣いていた。ほんと、なんなんだ、おまえは。なに、その涙の意味。
今、正におまえが欲しいものが、何の努力もなく手に入るってのに、
ふてくされたようにグズりっぱなし。
それを横目に呆れてため息をついた
その時だ!!
前世紀最低最悪超弩級の理不尽爆弾が投下されたのは!!いつまでもピーピー泣いてるコーケッピに見かねた林文具店のばぁちゃんが、
「あれあれ、なんで泣いとるの。まぁ〜かわいそうに。
ちょっと待っとりゃーよ」
とかなんとか言いながら裏にひっこみ、戻った手にあったものは…
これまた、当時大人気で超品薄だったファミコンカセット。
スーパーマリオブラザーズ。当時の販売価格、忘れもしない4900円。
そ れ を だ
「はい、これ、オマケで付けたげるわ」
(°д°)あwせdrftgyふじこlp;@!?待ぁーて待て待て待て待て待て待て待て待て待てぇー!
ハッ!?
なーーーんだ、それ!? オマケ!? ロハ!?
ありえねぇだろ、ばーちゃん!!
ぼくのあの努力はなんだったんだ!!
食べたいおやつを我慢して我慢して、
50円ずつコツコツ貯める事、1年強。
コーケッピなんて…コーケッピなんて…
ただ泣いてただけじゃんかよ〜〜う!あの努力を、こんな形で汚されるとは!!
傷ついた! ああ、傷ついた!! 傷ついた!!!
泣いた。こんな理不尽に小学生が耐えられるはずもない。
でも、コー母もばぁちゃんもなぜぼくが泣き出したか分からない。
コー母「あらあら、さくらい君、どうしたの?」
ばぁちゃん「あれー、ごめんねぇ。でも、これ1つしかないんだわ…」
そう聞いたとたん、ふてくされてたコーケッピがバッと顔をあげ、
ばぁちゃんの手からスーパーマリオをひったくった。
こ の や ろ う は …
スーパーマリオを手にしても、ぐずりっぱ。
コー母に「あらもう、この子は。ありがとうは?」と促され、
やっと小声でボソボソ礼を言った。
帰り道の事は覚えていない。記憶がスッポリ抜けてる。
小さい頃の事はわりと細かいところまで覚えてる方なんだけど…
たぶん、そうとう放心状態だったんだろうなぁ。
念願のファミコンを買えた喜びなんかとっくにふっとんでいた。
覚えてるのは、なぜ喜び勇んで出かけた息子が、
ふてくされて帰ってきたのかわからない、かぁちゃんの困惑顔…
そりゃそうだよね。せっかく買ってきたファミコンをほっぽって
部屋の隅っこでうずくまってんだから。
50円ずつコツコツ貯めた事はぼくの努力でも、
その小遣い自体をくれたのはとぅちゃんとかぁちゃんだ。
小学生ながらも、そのへんわきまえてたぼくだったけど、
この時ばかりは素直に「ありがとう」とは言えなかった。
とにかく、ふてくされていた。
「これがふてくされていい正当な状況だ」とコーケッピに示すがごとく。
まぁ、いつまでもそんな態度でいたから、はったおされたけどね…
その後